「動けばよいってもんじゃない 」ですが、ショッピングカートはその最たるものの一つです。かつてネット通販が出始めの頃、いろいろなケースに出会いました…
最も多かった問題が、返信メールに記載されたURLをクリックするとログインもしていない(そういう通販サイトにはcookieとかセッションとかいう概念が存在しません)のに住所から注文内容から確認できるものです。メールにURLを記載しなければ良いという話でもなく、注文するときはそのようなシステムと知らないわけで、注文終わってからあーやばい通販だったかと学習することになります。今では使う通販も決まってきて新しいシステムの通販に手を出すことはほとんどないのでそういう思いをすることもまずないですが、いまだに某大手ISPのアンケートシステムでも使われてました。海外のTシャツ屋、今は無くなってしまった書店、今もある比較的大手の通販、などなど何度か出会いました。「該当URLが404を返すようにして、あと恐ろしいのでカードの情報も削除しておいてね」とお願いすると、そのすべてから「URLにランダムな文字列が入っているので大丈夫!」(鍵が貼り付けてある金庫なので当然大丈夫じゃないです。念のため)「SSLだからデータは安全!」(通信路の暗号化であり、しかもメールで送られてきてしまったURLは暗号化されていないうえに両端ではデータは復号化された状態なので全然大丈夫じゃないです…)と笑い話にもならない自信満々のお返事を頂戴したものです。
このたび「noindex,nofollow,noarchiveと書いてあるし、user agentでロボットはじいているから大丈夫!」という説も増えたようですが、何にせよ鍵が横に貼り付けてある金庫を、メールで送ったりブラウザから送信させておいて、その金庫の中身が大丈夫だと言ってしまうのはこれまた…
今時ですとブラウザに各種ツールバーをインストールされている方も昔よりも格段に多いでしょうから、tappingやらbrute forceされるまでもなく、そして自らが認識しているかどうかにかかわらず閲覧しているURLが他ホストに自動的に送られている場合も、セキュリティのためなどと称して多数あることでしょう。また別の側面では「ランダムな文字列」が実は順番の数字のBASE64エンコードだったりソルト無しハッシュ値のような、なんちゃってランダムだったときにもノーガード公開状態となります。
このようなシステムを作ってしまう人がここ十数年絶えることなく出続けてきたわけですから、webアプリ作成者の常識に期待することをあきらめるとすると今回のような深刻な犠牲者を増やさないためにはどうすればよいでしょうか。セキュリティソフトと呼ばれるものの中には生のまま特定の情報が送受信される場合に通信を遮断する機能を持つものがありますが、メールで送られてくるURLの場合のように他人のシステムから送られてきてしまう場合、そしてそのページに問題がある場合にはいかんともしようがありません。良さそうなのは、ショッピングカートに限らず鍵付き金庫をばら撒くようなシステム採用サイトのレピュテーションサービスでしょうか。コミュニティーベースでしか成立しそうにないですが、消費者保護とサービス提供者の常識確保のために政府にやっていただければ良いですね。そしてやはり経営者さん、特に消費者の不利益に直結するサイトを運営されている経営者の方たちも「動けばいいってもんじゃない」を考えていただけるとありがたいです。
と今回の某通販での大惨事の記事を見て思ったことでした。